この度、院長に就任いたしました小川です。
私はもともと脊椎外科医として日々の診療にあたっていましたが、不慮の出来事により頚髄損傷を負い、車椅子生活となってから約15年が経ちました。 医師という立場から一転して「障害を持つ患者」となり、先の見えない深い絶望の淵に立たされた日のことは、今でも鮮明に覚えています。 しかし、そこから約8ヶ月間の懸命なリハビリテーションを経て、私は再び社会に復帰することができました。 あのリハビリの日々がなければ、今の私は間違いなく存在しません。 患者としての消えそうな不安や絶望、そして医療者として再び誰かの役に立てるやりがい。その両方を肌で知る者として、「リハビリテーション医療への恩返し」の思いを胸に、この下関リハビリテーション病院で医師として約10年間働いてまいりました。 患者さんと共に悩み、共に笑い合ったこの10年間は、私にとってかけがえのない財産です。 そして今年から、院長という重責を担うこととなりました。就任にあたり、皆様にお伝えしたいことがあります。それは、リハビリテーション医療の中心は、他でもない「患者さんご自身」だということです。 突然の病気や怪我に直面したとき、目の前が真っ暗になることもあるかもしれません。しかし、私自身の経験からこれだけは確信を持ってお伝えできます。深い絶望の向こうには、必ず希望があります。 患者さんご自身の中には、「再び自分らしい日常を取り戻し、これからの人生を力強く前へ進めていく」ための力が必ず眠っています。だからこそ、私から皆様に一つお願いがあります。どうか、ご自身の身体やこれからの生活を、私たち医療者任せにしないでください。「こんな風になりたい」「あの場所へもう一度行きたい」という、ご本人の希望と意志こそが一番大切です。治療や目標設定の話し合いには、ぜひ積極的に参加してください。私たちはその力を引き出し、共に目標を決め、ご自身で人生を切り拓いていくための環境を整える「黒衣(くろご)」として、全力でサポートいたします。 また、病院からの「退院」は決してゴールではありません。私たちの最終的な目標は、皆様の「社会復帰」であり、「自分らしい生活を取り戻すこと」です。そのため当院では、入院中のリハビリだけで終わるのではなく、退院後の外来リハビリ、ご自宅へ直接伺う訪問リハビリ、そして通所リハビリと、皆様が住み慣れた地域で安心して暮らせるようになるまで、ずっと横に寄り添い、伴走し続けます。その道のりを支えるため、当院のスタッフは高い専門性を持ったプロフェッショナル集団で構成されています。脳卒中や大腿骨近位部骨折といった一般的な回復期リハビリはもちろんのこと、当院では回復期病院としては珍しく、より高度で専門的なチーム医療を提供しています。心不全などを診る「心臓リハチーム」、私自身も専門とする脊髄損傷などを診る「脊椎リハチーム」、そしてパーキンソン病をはじめとする「神経難病チーム」が、それぞれの専門性を発揮し、お一人おひとりの症状に合わせた最適なリハビリを提供いたします。 「この病院でリハビリをして本当によかった」。皆様とご家族にそう心から思っていただけるよう、職員一同、温かく、そして力強く伴走してまいります。どうぞよろしくお願い申し上げます。
令和8年1月1日 下関リハビリテーション病院
院長 小川 浩一